2011年度公開講座:長良川の自然、文化と地域科学 報告

地域科学部の企画による岐阜大学公開講座「長良川の自然、文化と地域科学」 を、2011年9月10日、9月17日、10月1日の3回にわたって開催しました。

9~10月 の土曜日に地域科学部が開催している連続講義に毎年参加してくださる常連のみなさんに加え、「広報ぎふ」や岐阜大学ウェブサイトでこの企画を知って初めて参加してくださった受講者の方々もいらっしゃいます。高校生・大学生も複数参加してくれました。

第1回(9月10日)は、まず地域科学部の向井貴彦准教授による講義「長良川の 魚たち - 川の環境変化を魚の視点で考える」で幕を開けました。アユやサツキマスだけではない多種多様な魚たちを調査した結果に基づき、水田環境の変化や 河口堰建設が引き起こした問題、外来種の問題など、魚が暮らす環境としての長良川が抱えるさまざまな問題点が指摘されました。続いて地域科学部の肥後睦輝 教授による「長良川と流域の自然 - 森と川と海のつながり」では、川の生態系 が森や海の生態系とどのように影響を与え合っているかが解説されました。 この日最後の講義は、地域科学部の粕谷志郎教授による「長良川河口堰によって失われた自然環境と回復へのシナリオ」です。折しも愛知県による長良川河口 堰検証が行われており、粕谷教授が長良川河口堰検証専門委員会の委員でもあったことから、講義では河口堰建設までの経緯や推進派・反対派双方の議論が紹介され、河口堰に関わる具体的な環境問題についての白熱した授業になりました。

第2回(9月17日)は大学の外に出て、岐阜市内の長良橋周辺で街歩きフィール ワークを行ないました。ガイド役は今回の公開講座のコーディネーターである 地域科学部の富樫幸一教授、およびNPO法人「森と水辺の技術研究会」理事長の野村典博氏です。「長良川橋周辺の暮らしと町並みを歩く」と題されたこの街歩きは、まず現在の岐阜市の水源として使われている鏡岩水源地を訪ね、かつての農業用水であった忠節用水の水路に沿って歩き回ったあと、川原町の住民による 「まちづくり」活動が復活させた風情のあるおしゃれな街並みを経て、長良橋に戻ってくるというコースです。 午前中の大雨のせいで水源地の滝はいつもよりずっと勢いよく流れ、雨が水の恵みをもたらすことを実感させてくれました。忠節用水の水路は今では路地になっているところが多く、受講者は地元の人でも行かないような狭い路地にずんずん入り込むことになりました。由来を知らなければ何の変哲もない路地ですが、 ガイド役の講師の説明を聞くことで、まるでテレビの「ブラタモリ」で古い江戸 の街がCGで浮かび上がるように、忠節用水を泳いで家に帰る子どもたちや江戸時代の奉行所の建物が目の前に浮かび上がる思いがしました。

第3回(10月1日)は、まず地域科学部の稲生勝教授による講義「子ども自然体 験の場としての長良川」で、長良川の支流での自然体験を通じた子どもたちへの環境教育の取り組みが紹介されました。続いて岐阜市歴史博物館学芸員の筧真理 子氏による「江戸時代の治水と“地域の力”」では、長良川の支流の水害対策をめ ぐって利害が対立する地域どうしの、江戸時代から明治以降にまで及ぶ長い長い 争いの歴史が語られました。

今回の公開講座を締めくくる「川と人との関わり:トークとワークショップ」 では、講師陣のうち富樫教授、粕谷教授、肥後教授、野村氏の4人と受講者とが直接対話を行ないました。受講者のみなさんも積極的に発言してくださり、水害 対策に代表される地域住民と長良川との関わりや、河口堰問題をめぐる活発な議論が繰り広げられました。 講座終了後に提出していただいたアンケートでは、受講生のみなさんから「長良川の流域に住む者として、自然とどう付き合っていくか考える良い機会になりました」「市内に住みながら知らなかったことが一杯あり、歴史や文化、長良川 と共に地域の様子が大変よく理解出来ました」「河口堰の問題について『トーク とワークショップ』での話し合いは、とても現実感があり、とても楽しく考えさ せられました」といったご意見が寄せられました。岐阜で生活する私たちにとって身近な自然環境である「長良川」にテーマを絞ったことで、きわめて統一感のある連続講義を実施することができたと思います。

(2011年度公開講座委員会委員長・内田勝)


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