学部長挨拶

地域の深淵から世界を問い直す

地域科学部長

 岐阜大学地域科学部の門を叩こうとしている皆さん、こんにちは。
本学部は、日本の地域系学部の先駆け的な存在として、1996年に誕生しました。私たちが創設以来大切にしてきたのは、既存の学問の枠にとらわれず、複雑化する社会課題に対して多角的な視点からアプローチする「知の最前線」であることです。

 現代において「地域」について学ぶ、あるいは「地域」という視点から社会について考える意義は、どういうところにあるでしょうか。私なりに考えてきたことを述べてみますと、それは「ナショナル(国家レベル)」な価値観を相対化し、世界を重層的に捉え直すきっかけを与えてくれるという点です。

 皆さんは「地域」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。地元のまちづくりや伝統文化を想像するかもしれません。もちろんそれも大切な要素ですが、私たちの捉える「地域」はもっと広く、深い概念です。「地域」には、顔の見える関係が育まれているコミュニティから、行政単位である自治体、さらにはアジアやEUといった国境を超える圏域も含まれます。近代とは、政治や経済の仕組みをナショナルな枠組みを基軸に形成しようとする志向を持つ時代と言えますが、現代社会が直面する地球環境問題や急速な少子高齢化などの新たな諸問題は、そうした枠組みの限界を露呈させています。そうした限界を乗り越えようとしていくときに、「地域」がカギになるのではないかと多くの人が考え始めています。地域科学部は、そうした試みの最先端でありたいと考えています。

 こうした諸問題を解決するには、一つの専門領域に閉じこもるのではなく、経済学、法学、文学、心理学から物理学や生物学に至るまで、文理の垣根を超えた学際的な視点が不可欠です。本学部は、特定の専門教育に限定せず、幅広い「学問知」を学ぶことが本物の教養を育むと考え、そのためのカリキュラムを用意しています。

 こうした学び方の姿勢を獲得してもらうために、私たちは徹底した少人数教育を実践しています。2年生の後半から卒業まで続く「専門セミナー」は、1学年あたり4人という少人数制を堅持しています。教員と学生の距離が非常に近く、一人ひとりが丁寧な手ほどきを受けながら、自身の研究を深めることができます。また、教室での理論学習にとどまらず、社会の現場へ飛び出すことも大切にしています。「社会活動演習」や「地域学実習」、そして「国際教養プログラム」による海外留学など、フィールドワークを通じて現実の制約や課題を肌で感じ、再び理論に立ち返ってクリティカルに考え抜く。この試行錯誤のプロセスが、常識に縛られない新しい解決策を提案できる創造的な思考力を養います。

 高校生の皆さんの中には、「まだ将来の目標がはっきりしていない」と不安を感じている人もいるでしょう。地域科学部は、目標が明確な人はもちろん、自分の進路に迷っている人も大歓迎します。本学部のカリキュラムは、学生自身の興味に合わせて選択できる自由度の高いものです。例えば、政策学科で経済を学びながら、哲学のセミナーで卒業論文を書くといった「寄り道」も可能です。いろいろな分野に目移りし、迷い、回り道をしながら研究を深めていく。その過程で主体的に進路を選び取っていくことも、立派な「学び方の姿勢」の一つです。

 卒業生の多くは公務員や地元企業などで活躍していますが、そこで求められているのは、どの分野を学んだかに関わらず、「しっかり考えることができる思考力」です。本学部で身につけた「多種多様な観点から総合的に捉える力」は、どのような業界に進んでも高く評価されるでしょう。事務職員による熱心な学生支援体制も整っています。地域社会に対して、そして自分自身の人生に対して、新しい「遊び方」や「解決策」を提案できる人になりたい。そんな熱意、あるいは切実な「迷い」を持った皆さんを待っています。私たちと共に新しい知の冒険を始めましょう。

地域科学部長 山本 公徳