学部長挨拶

気が多い人のための学部です

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 岐阜大学地域科学部は、1996年に日本で最初に「地域」という名称を冠して設置された地域系学部です。地域社会と人間文化が抱える課題を発見し、その解決を図るために、人文・社会・自然科学の多様な専門領域による文理横断的・学際的な教育研究が行われています。地域との連携を含むその教育研究活動は、地方創生と地域発展の鍵として社会的に大きく期待されています。

 地域の諸問題を多種多様な観点から総合的に捉えることのできる人材を育てる地域科学部の卒業生は、もちろん公務員になる人が多いですが、他にも地元企業を中心に、金融・保険業、卸売業、小売業、製造業など、幅広い業種に就職しています。

 地域科学部の2つの学科が提供するのは、免許や資格の取得を目指してきっちり固められたカリキュラムではなく、学生自身の興味に応じて学びたい分野の学習を深めていくことができる、自由度の高いカリキュラムです。地域政策学科に3つ、地域文化学科に2つ用意された履修系統に沿って多様な分野の科目を学ぶ一方、専門セミナーと卒業研究により、文系・理系の諸分野(経済学・法学・政治学・地理学・歴史学・人類学・社会学・教育学・心理学・哲学・文学・言語学・物理学・化学・生物学など)の中から、特定の分野を深く学んで専門性を高めていきます。

 地域政策学科の履修系統は、「産業・まちづくり」「自治政策」「環境政策」の3つです。地域文化学科の履修系統は、「生活・社会」「人間・文化」の2つです。学科選択や専門セミナーの選択にあたっては、たとえば地域政策学科の「産業・まちづくり系統」で経済学を中心に学ぶ学生が、一方で「哲学」の専門セミナーに入って哲学関連の卒論を執筆するといった、学問分野の垣根を超えた選択も可能です。目標を一つだけに絞ってフルスピードでまっしぐらに進むタイプの人よりは、いろいろ寄り道しながらゆっくり研究を深めていくほうが好きな、気が多い人のための学部だと言えるでしょう。

 地域科学部では多様な学問分野の科目を開講していますが、他学部や社会システム経営学環の開講科目を自由選択科目として履修したり、全学共通教育の単位互換制度を利用すれば、選択の幅はさらに広がります。岐阜大学地域協学センターが提供する「次世代地域リーダー育成プログラム」に参加して、「ぎふ次世代地域リーダー」の称号獲得を目指すのもいいでしょう。

 そのほか地域科学部には、学外での実習を行う「社会活動演習」や「地域学実習」といった必修科目もあります。1年間の海外留学をしながらも4年間で卒業できる「国際教養プログラム」も用意されています。

 地域の諸問題を解決するためには、あなたの理想を実現するうえでどんな制約があるかを把握し、それらの制約を取り払うにはどうすればいいかを考え、制約を取り払えないのなら、制約の中での解決策を模索することが重要です。お金も人手も足りない中で、たとえ理想には程遠くても、最善の策を見つけるために試行錯誤を繰り返す必要もあるでしょう。その一方で、制約と思われたものを逆手に取って、常識を打ち破り、誰も思い付かなかった意外な解決策を提案できることもあるでしょう。「~でなければならない」という常識に縛られて窮屈な思いをしている地域の人々を救うのは、非常識の提案ができる人です。あなたも地域科学部で学び、地域社会に対して生活の新しい遊び方を提案してみませんか。

 なお地域科学部の上には、地域政策専攻と地域文化専攻から成る大学院の地域科学研究科(修士課程)があり、ここには地域科学部の卒業生だけでなく、他大学の卒業生や社会人、そして海外からの留学生が集まっています。地域科学研究科では、より高度な専門応用能力とより幅広い国際性の涵養を目指す教育・研究を通じて、高度専門職業人や研究者を育てています。

地域科学部長 内田 勝